オイルとショック

オイルショックと今回の逆オイルショックではバレル当たりの価格幅が大きく異なります。
42年前(1973.10)のオイルショック時、OPECが原油価格をいきなり70%(3$→5$)
引き上げ、翌年オイル価格はさらに2倍(5$→12$弱)に引き上げられました。
その結果原油価格一挙に約4倍(3$→12$)となりましたが、価格幅は9$に過ぎません。
 
今回の所謂逆オイルショックでは原油価格100$超→36$、下落幅は70$を超えており
上昇幅と下落幅の差から見れば、今回はもっと良い影響があって良さそうに思うのですが。
 
オイルショック時、産業界も個人も右往左往、人々はトイレットペーパーを買いに走り
企業は投資抑制に舵をきりました。前年からの列島改造ブームによる地価、物価の上昇と相俟って
物価は1年で23%も上昇、物価抑制のため政策金利は9%まで上昇、日本経済は戦後初めての
マイナス成長に陥いり、先進国経済はインフレと景気減速の同時進行するスタグフレーション
に見舞われ、戦後の成長経済はズタズタになりました。
 
今回の原油価格下落は先進国消費者にとって朗報であり、店頭のガソリン価格等に顕著にその
影響が現れています。しかし原油の下落幅から見れば、もっと大きく経済回復に貢献してよい
ハズですが、今のところ先進国経済が劇的に改善したという状況ではありません。
原油下落が前回オイルショックの時ほど実体経済に反映されない理由は、新興国と先進国の相互
依存性にあるのではないかと考えています。
 
オイルショック以来、産油国には莫大な富が流入しました。地下から絶え間なく湧き出る
オイル。その価格が一挙に膨れ上がったので、産油国にとっては笑いの止まらない状況が
続きました。ドバイに建設されたブルジュ・ハリファは、世界一の高さを誇りオイルマネー
の富の象徴のような存在となっています。一方、オイル消費国たる先進国にとっては富の
流出となります。オイルによる富の流れは先進国から産油国へというほぼ一方的なものでした。
 
今回の逆オイルショックを富の流れという観点で 見てみると、産油国→先進国という一方的な
流れとはなっていません。産油国の損失は先進国の損失でもあるという双方向性が今回の特徴
です。先進国の損失とは①オイルに投資してきたファンドの損失②米国シェールオイル企業へ
の出資者損失③産油国を含む新興国に進出している企業の損失など複合的なものです。
 
オイル価格が急激に上昇した2004~2008までの上げは、余剰マネーが原油という比較的
小さなマーケットに流れ込んだことが最大の理由といわれています。その結果、今回の
価格大幅下落の影響は、原油市場に多額の資金を持ち込んだプレイヤーの損失という形で
まずは商品に投資するファンド等が被り(上記①)、次に②③を理由とした株式市場の
下げが発生しました。また、中東産油国もSWF(国富を投じたファンド)等が国家財政
穴埋め目的でファンドの現金化をせまられ、これまで投資してきた株式市場などでの売却
を余儀なくされました。さらに、株式を始めとするマーケットの価格下落は先進国の実体
経済にも影響がおよび、経済を阻害する方向に働いたと考えられます。
 
上記③は貿易を通じた相互依存性によるものでもあります。現代社会では先進国と新興国
の関係がより緊密になってきています。先進国で生産された製品は新興国にも多数、輸出
されています。オイルをはじめとする資源を産出する新興国の経済が原油価格下落で低迷
すると、その影響はすぐに先進国の輸出減少となって現れます。
 
現在の世界は、40年前の産油国対消費国という単純な図式で動く世の中ではなくなりました。
マネーの動きや貿易が、国家を超えて相互に影響を与えながらより深く、より広く、より早く
世界を動かす複雑な社会へと変化を遂げているのです。
 

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