「嫌われる勇気」はビジネスに役立つか?

マズローとアドラーは承認欲求について正反対の立場を採っています。前者は人間の欲求の最高位に自己実現欲求を置き、そこに至るまでの一段階として承認欲求があるとしています。マズローの見解に従えば、人から認められたいというのはヒトとして当然の欲求ということになるのでしょう。

 

一方、アドラーは人から認められることに執着することが不幸につながるので、そうならない為にも「嫌われる勇気」をもつこと、これにより承認の欲求から自由になれるとしています。人に認められることを求めるより他者への貢献感が幸せにつながると考えているようです。フェースブック等の「いいね」の数が人間の価値の尺度という主張がありましたが、真向反対する立場だと思われます。

 

ビジネスの目的は自社製品やサービスを認知してもらい購買に結び付けることにあるので、出来るだけ多くの人に良いものと認めてもらわねば仕事として成り立ちません。多くのデータを分析してどのようなニーズがあるのかを導き出そうというのが最近のビッグデータ隆盛の背景です。従ってマズロー的承認欲求に執着するのは自然なことではあります。

 

一方、創作や芸術を追及している人達にとって重要なのは自らの中にある表現欲求に忠実であることです。たとえ人に認められなくとも自分の拘りを優先したいというのが創作者の本能なのだろうと思えます。不幸にも作品が世に受け入れられず、死後になってようやく世間が高い評価を下すようになった、という例は数多あります。世間に妥協しなかった彼らは「嫌われる勇気」を実践したということなのでしょう。

 

昨今のビジネスにおいて勝ち組となっている企業の中には、アドラー的要素を組織の中に組み込んで他との差別化を図っている企業が出てきています。必至になって顧客ニーズをリサーチしこれに応えようとするよりは、世の中にない新たな商品を提案して膨大なマーケットを自ら作り上げてしまうというスタイルです。

 

世の中にないもの、ということになると当然のことながらビッグデータをいくらリサーチしても何も出てきません。そこで、社員の労働時間の一定割合を本業の仕事と全く関係ないことに費やすことを許すことで新しいブレーク スルーを産みだそうということが試みられます。

アドラー的特質を持つイノベーターが社内から多く輩出されるような企業風土を作ること、それが、事業優位性の維持につながる時代に入っているのではないでしょうか。

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