カードを飲み込むATM

6年前のことです。フランスのニースに夕方到着してユーロを手元に持っておくべく、デパートの一階にあるフランスの某銀行ATMで金を引き出そうとしました。世界中で使える英系のカードを入れ180ユーロをどのような札の組み合わせで引き出すかというボタンを押すも、何か文字が出たまま、札が出てきません。おまけにカードも飲み込まれたまま。すべてのボタンを押してもATMはウンともスンともいわないのでした。

通りかかった親子に事情を話すと、連絡先と書いてあるところに電話してくれたりしたものの、つながりません。親子には英語が通じず、小生のフランス語レベルは小学生以下です。

小生の後にATMで金を下ろしに来た年配の女性は自分のカードで引き出せたようなので、事情を話すと近くにある某銀行の場所を教えてくれ、紙にフランス語で事情を書いてくれるなど、ものすごく親切でした。後になって、飲み込まれたカードは銀行で保管されるということが分かったのですが、そんなことはツユ知らず、誰かの手に渡ってしまったらと思うと気が気ではありません。

やがてデパートのセキュリティー係を捕まえて事情を話し、デパートの受付が銀行に電話。結果、本日銀行は休みなので明日行ってみるようにとのこと。すったもんだの挙句3〜4時間その場にクギ付けとなっていたのでした。

救いはニースの人は皆とても親切だったこと。一般的にフランス人は個人主義で人に冷たいと言われていますがそんなことは全くなく、困っている人を助けようという気持ちは全員共通のものでした。日本で外国人が困っていたら、ここまで親切にしてあげられるでしょうか。

翌日、銀行は休みでも場所だけは確認しておこうと教えられた場所へ。1人行員がおり、説明によるとカードは一週間に一度本店に集められ、そこでしか受け取れないとのこと。本店はプロムナード・デ・ザングレという海岸道路の一本内側にあるとのこと。その場所へ赴き某銀行のベルを鳴らしてみましたが誰も出てきません。

ラッキーなことに某銀行の隣に飲み込まれたカードの発行英系銀行が並んでおり、行ってみると3名勤務中。事情を話したところカードは他行のことなので何ともならないが、現金は用立てることができるということで、セキュリティー上の様々な手続きを経て200ユーロを受け取ることができました。

カードが戻ってくると言われていた、4日後再び某銀行へ。ところがなんとカードは戻ってきておらず、あと1~2週間かかると言われ、危うく日本語で啖呵をきりそうになりました。これまで約8時間余りの時間を費やしたのです。そして明日が帰国予定日。マネージャーの男が言うにはカード発行銀行に行ってopposition(suspend。差し止め)の手続きをとり、その後の手続きは同行でやるようにとのこと。英雄ナポレオンを産んだこの国の銀行の辞書には「不可能の文字」しかないのか、と思い切りイヤミを言ってやりました。

みずほ銀行のATMで飲み込まれたカードが戻ってこず、様々なトラブルが重なって頭取が謝罪するという事態に至りました。その場から動くこともできず途方に暮れた預金者には同情を禁じ得ません。同時に日本の銀行でもこのような不始末がおきたことはまことに残念。原因はよくわかりませんが、どこの国でも起きることのようなので参考のためブログにしておきます。