持続的な悲惨ゴールに向かう世界

米国大統領選挙後、株式市場は勢いよく上昇しましたが長くは続かず下落から横ばいが続いています。原因は米国債の利回りの上昇。トランプ氏の施策が実現のものとなりつつあることで、市場はインフレリスクを警戒しており、これが債券利回りを押し上げています。


トランプ氏が選挙中から主張していた減税、関税引き上げ、移民抑制策はすべからくインフレにつながるもの。米国財政は悪化の一途をたどっているのに、今後さらに国債を発行することになれば利回りが上昇するのは自明の理です。また関税引き上げにより米国内への生産回帰を目指す自国第一主義を追求すれば米国のみならず世界にインフレと景気悪化をばらまくことになります。移民抑制策は労働力低下によるインフレの原因となります。


米国債利回り上昇は日米金利差拡大を通じて円安ドル高をもたらします。トランプ氏はドル安にすべきと主張していますが、実際は円安ドル高と反対方向にむかっています。IIF(国際金融協会)は世界の政府債務は2030年末にはコロナ禍前の3倍に膨らむと予測。新型コロナ対策として世界各国がカネをばらまいたからですが、これに加えて米国第一主義の施策分が加わるなら貨幣の価値は下落を免れません。


さすがにこれはまずいと考えたのか、イーロン.マスク氏にDCGE(政府効率化省)を主導させ歳出削減により過剰支出を終わらせるとの方針を打ち出しています。しかしマスク氏は
いくつもの企業CEOであり自社の利益と、米国民の利益との利益相反問題をどのように回避できるのでしょうか。


選挙に勝つために国民が望む目先の利益を提供するポピュリズム。長期的安寧よりも自分の利益、これは将来の世代につけが回ることを意味します。SDG(Sustainable Development Goals )のDが「発展」ではなく「悲惨な」(Disastrous)を意味する世界に向かうとするなら、我々は何をしておけばよいのでしょうか。今後の米国政策の行方をしっかりフォローしてゆく必要がありそうです。