不動産はなぜ怖いのか

不動産投資で利益を出す秘訣は不動産ブームになる前のタイミングで買い、ブームが終わる前に売ることです。当たり前じゃないか、と言われそうですが不動産には特有の特徴があります。単価がとび抜けて高いことです。従って大抵の場合、借入をしなければ買うことができません。


自己資本と借入金を合わせて物件を手に入れる訳ですが、一般的に自分の資金より借入額の方が大きくなります。これは、大きなレバレッジ(少ない資金で大きな額の取引をすること)をかけることと同義です。その上、長期に亘る利息の支払いがついて回ります。売却時の不動産価格が買い価格(支払い利息込み)以上になっていれば、小さな資金で大きく儲けたことになりますが、逆なら出資金は無くなったのに借入金だけが残るという悲惨な状況になります。


ブームが過熱すると加速度的に価格が上昇し、不動産を住居として購入しようと考えている人にとっても手の届かない所に価格が駆け上がる懸念が生まれます。真面目に働いていても家が持てないというのは政治的に大きな問題なので、政府は価格上昇を抑えにかかります。


過去にいくつかの国で行われたのは総量規制。不動産を買い付ける際に銀行が貸し付けるローン金額を一定の枠内に抑え込むものです。いわゆる不動産バブルつぶしの対策ですが、過去の日本で起きたことを見てもわかるように、無理やり需要を押し下げる政策は大きな問題を引き起こします。多額の借り入れをして手に入れた、多くの国民のわずかな資産価格が下がってゆくからです。


不動産価格が下がっても、借入金は減りません。買い手はまだ下がることを期待して中々現れません。売れるまでに時間もかかります。借入金には利息がついて増えてゆくので明るい未来は夢のまた夢。こうした状況が人間心理に与える影響は経済全体に及びます。日本が失われた20年を経験した原因の大きな一つと言えるでしょう。


現在世界にリスクとして認識され始めた中国不動産開発業者の恒大の資金繰り懸念。同社の負債総額は約33兆円ととてつもない大きさで、不動産開発業者にとっても大きな借入金がもたらすリスクは個人と同様です。規模の大きな企業の場合、倒産は社会に与える影響が大きい為、政府から手を差し伸べられることがあります。


しかしながら不動産バブルを政策理念上抑え込みたい習政権の意向を受け、同社への追加貸付には制限がかかっています。債券の利払いに支障をきたしはじめデフォルト(債務不履行)不可避と見られ、世界の株式市場も大きく動揺しました。今のところ事が一開発業者の倒産に限定されるのであれば、リーマンショックのような事態には至らないであろうとの予測が大勢を占めているように見受けられます。


しかしながら、上述のような不動産の特異性により一度破綻が起きると連鎖的に影響が拡大するのもまた事実。中国不動産そのものの価格下落が、世界金融バブル崩壊の端緒となることなく解決されることを切に願いたいと思います。