不気味な足音

1月の世界株価は連続して大幅に下落しました。米連邦準備制度理事会(FRB)議長パウエル氏の発言をきっかけとしたものですが、3月の利上げ、FRBの抱える9兆ドルもの資産縮小(QT)が視野に入ったことに市場が反応したものでしょう。幸いにもその後、少なからずの企業で増収益の決算発表が連続した為市場は落ち着きを取り戻しています。


ただインフレのペースは上昇しており、米国消費者物価指数は年率7%と40年ぶりの高い水準となりました。インフレが高まり中央銀行が金融引き締めに向かうと、金利の上昇を受けて株価収益率(PER)の高い銘柄は売られます。株価はPERと一株利益(EPS)の積なので、EPSが上昇しなければ(翌期利益が大きく増加する見込みがなければ)株価は下落せざるを得ないことになります。


EPSは二極化しており、特に非製造業は人流抑制の影響を受け続けています。いきなりコロナが消えてなくなりでもしない限り、多くの非製造業は株価の面でも厳しい評価を免れることは難しいと思われます。


3月の15.16日に予定されている連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げが決定されれば、次は桁違いのマネーが流れ込んでいるFRB保有資産の縮小が視野に入ってくるとみられます。この意味するところは、これまで金利を引き下げ、国債等の債権を買い続けてきた中央銀行のスタンスが180度逆の方向に向かってゆくことであるので、そのインパクトは相当なものとなることが予想されます。欧州においてもイギリスの中央銀行が利上げに踏み切り、(2月3日)保有資産縮小も開始。欧州中央銀行(ECB)も引き締め方向に方針を転換しています。


過去に経験のない程に膨れ上がった、各国中央銀行による膨大な資産の縮小によりどのようなインパクトがあるのか未体験のゾーン故、不明ではありますが、株や不動産等の資産価格を支えていた土台が少なからず崩れてゆくことになるので何も起こらないということはあり得ないと言えるでしょう。


国内においては、コロナ対策として打ち出された無担保、無利子融資の終了期限が3月末に迫っています。同融資は国のみならず、金融機関も巻き込んだ対策なので期限終了となれば貸出は減り、回収も始まることになると思われます。借入に依存して持ちこたえてきた企業は、厳しい試練に直面することになるのではないでしょうか。


資産バブルを正当化してきたマイナスの実質金利がここに来て、大幅に上昇しています。(21年末の▲1.04→▲0.5%)1か月で0.5%の上昇率は思いの外早く、あたかもバブル崩壊が迫る足音に聞こえます。3月は潮目が変わった月として記憶されることになるかもしれません。