リセッション入り、ボラの出現

インフレにより酷い資産価格の暴落を本年前半経験した米国。そこから1ヶ月が過ぎた7月28日、日本時間21:30、米国GDPが2四半期連続マイナスであったことが判明するやドルが急激に下落を開始。3月中旬115円台であった円ドルレートは一時140円超えまで上昇を続けてきていましたが、この発表を機に一日2円のペースでなんと5営業日連続で下がり続けました。


リセッション(景気後退)確定ととらえたマーケットは、為替のみに止まらず債券相場においても同じように反応しました。(一時3.4%超えまで上昇していた10年債利回りが発表後5営業日連続下げ、一時2.55%割れ。)考えられるリスクがインフレよりもリセッションに移ったと解釈されたようです。


リセッション入りは長短金利の逆転現象(逆イールド)にも表れています。本来債券利回りは期間が長期になるほど高くなるのが道理ですが、現在はこれが大きく逆転しています。例えば本日(2022.8.10)現在、米国10年債利回りは2.79%ですが、2年物米国債は3.26%と逆転しています。


より精度が高いと言われる3ヶ月短期国債と10年国債の比較では、過去8回あったリセッションの全てで事前に利回り逆転が発生しており、1年程度の期間を経てリセッションに突入しいています。(本日現在、3ヶ月短期国債利回りは2.54%)


一方、米国株式市場においてはドルとは逆に3日連続で上昇に転じました。株式市場、債券市場はリセッションよりもインフレ後退への期待が勝ったようです。中央銀行は利上げのペースを落とす方向を期待し、景気後退はまだ先の話と判断したのかもしれません。


しかし、実質金利(10年債と期待インフレ率から導き出される)は株式にとってネガティブな方向を示しています。4月末まではマイナスが続いていましたが、5月以降プラスに転じ、プラス幅を広げてきているので株価には不利な状況となっています。


米国のみならず欧州各国等もインフレとリセッションのせめぎあいの時期に突入しており、これが様々な資産価格のボラティリティー(変動率)を高めています。今後インフレは終息してゆくのか加速するのか、景気後退はどの程度重大なものとなるのか等不確定要素が大きい為、おのずと資産価格の振れ幅は大きくなります。


このようなボラ(変動率上昇)の出現は先行きを見極めきれない投資家の迷いを象徴しているのでしょう。 日本は変動率においてそれほど大きな影響を受けていないように感じられますが、海外の情勢変化はタイムラグを伴って影響が及ぶことは避けられません。ちなみに、本日21:30、7月の米国消費者物価指数が発表されます。再びボラが発生するかもしれません。