異次元が生むもの

インフレによって物価が高騰しており、生活を守るためにはインフレ率を上回る賃金を確保する必要があると言われています。企業も賃上げには賛成の意向を示しているものの、一部の大企業を除いて実現はなかなか厳しいのが現実です。仕入れ物価も上昇しているなかで、人件費を引き上げれば赤字幅が拡大するだけという中小企業にとっては実現困難な要請であるというのが実感かもしれません。


賃上げの要請に答えるためには、提供する製品やサービスの価格を上げるというのが選択枝ではありますが、消費者にとっては一層の物価上昇となるわけで企業にとっては強い抵抗を受けるだけ。物価と賃金の堂々巡りとなり根本的解決にはなりません。


長年にわたって諸外国と比べて賃金水準が低いままであった日本。その理由は企業の生産性が低い為であると言われています。企業の生産性が上昇すれば問題は解決するということになります。どのようにすれば生産性は大きく上昇させられるのでしょうか。


生産性とは投資(工場設備等)に対してどれだけの成果が生み出されたか、その割合であると言えます。つまりアウトプット/インプットという式で表せます。この数値が高いほど生産性は高くなります。分子のアウトプットが大きく、分母のインプットが小さくできれば生産性は高くなります。


高い生産性を実現している国や業界では異次元の戦略を採っているケースが多くみられます。需要の見込める市場に妥当な価格の製品やサービスを提供するという一般的な方法ではなく目標を、高く売れる製品サービスを提供することに置くという異次元の戦略です。


例えばアップル。製品を高価格で提供するために何が必要かを判断基準としています。アパレル等の有名ブランド品も異次元の価格で売上を伸ばしています。高くとも買いたくなる製品の開発に最優先順位を置いているということです。


サービスの分野では世界を席巻しているグーグル、メタ(フェースブック)等がただで使えるプラットフォームを提供することで、億の単位のユーザーを獲得し、広告で稼ぐという異次元ビジネスモデルを作り出しました。


分母のインプットはどのように異次元となっているでしょうか。現在世界を席巻している企業の始まりは殆どが小さなベンチャー企業です。一人か二人の人材がガレージに泊まり込んで作り出した企業なので、コストはなきに等しいほどのものでしょう。


ただ、並みの企業との違いは世の中にないもの、大きな需要が見込める分野を見つけ出し、アイディアと開発力で世界中の人々が喜んで使えるような製品を作り上げたところにあると思われます。企業規模が大きくなっても技術の内製化によりコストを抑え、自社の強みを発揮できる分野にのみ投資を集中しています。


既に世界で圧倒的存在感を示している企業なので、参考にならないと考えられるかもしれませんが、会社を立ち上げたばかりのころ彼らが持っていたのは、異次元のアイディアと情熱、知識くらいのものだったと言っても過言ではないでしょう。


物価が上昇してくると、安く売ってくれる企業が消費者の味方と思えてきますが、企業が現状維持なら家計に回る賃金上昇は夢のまた夢。企業が目指すべきは異次元の生産性を何としてでも実現するアイディアと人材の確保にあると思われます。