市場はリスクをおり込んだのか?

昨年末から年始にかけて世界の株式市場は大荒れとなりました。日経平均は何度も20,000円を割り込み2019年はどのような年になるのか、今後の世界はどのように動いていくのか、いやな予感に包まれた年明けでした。


年末の25日、日経平均は1日で1,010円も下げ2018年最大の下落となりました。とんだクリスマスプレゼントを受け取ったわけですがこのプレゼント、送り主はトランプ大統領。議会との溝拡大、FRB議長の解任言及などを嫌気した市場は1,000ドルを超える下げで応え、その流れを日本市場が引き継いだのでした。


続いて20,000円を割り込んだのは本年4日の大発会。28日の大納会と比べて452円安ととんだお年玉を受け取ったのでしたが、このお年玉送り主はアップルのクックCEO。前日3日アップルの業績の下方修正発表により、NYダウは660$の下落、その流れを引き継いでの日本株の下げでした。また、3日の円ドルレートは一時104円台と数分間で5円も急騰(ドル安)しました。米中の貿易戦争は中国企業への悪影響が大きいと思われていたところ、米国への影響も予想外に大きいというショックがさらにダウの下げを加速したということでしょう。


さすがにここまで世界を揺るがす事態となると、根本的対応をせざるを得ないということで金融面ではFRBが利上げスピードを抑える方向に転換、米中も貿易戦争の解決に向けて妥協点を真剣に探り始めているようです。こうした流れを市場が織り込み始めているわけですが、果たして今後株価も底を打ってめでたしめでたしとなるのでしょうか。
残念ながらそうは思えません。


現在、市場変動の背後にあるのは複合的リスクだからです。中国と米国という二巨大市場で貿易というモノの流れが停滞し始めており、その影響が他の先進国や新興国に広がるので世界経済が減速するのは明白です。また金融(カネ)面では、リーマンショックの影響を吸収すべく世界中の中央銀行が緩和策を続けてきたマネーが吸収されずに溢れかえったったままです。カネの行き場がないのにモノの流れが制限され、実体経済にカネが回っていかなければカネの価値は下がり経済は低迷します。


これまで起きてきた世界危機は原因となった国が限定され、時間的にもタイムラグを伴っていました。またその影響の拡散を防ぐため、各国が協調して手を打つことでなんとか乗り越えてきたというのが実態です。


今回の米中貿易戦争はその何れもが異なります。世界の主要国が共通の認識と方向性をもって解決にあたる道筋が見えれば、やがて市場の行き過ぎが是正されるというのが「リスクの織り込み」ということでしょうが、歩調が合っているとは言い難いのが現実。過去に例を見ない形の今回の危機、どのような結末を迎えるのか注意深く見ておく必要があります。